ぽくぽく日記

毎日のくらしをぽくぽくとさんぽするように味わいたい。

タイムリミットは16時 中編

 こんにちは。
 本日も室内工事が行われていますが、室内工事は今日が最後だそうです。きのうの工事のおわりに、現場責任者の方が「長い間、ご迷惑をおかけしました」とおっしゃっていました。ご迷惑だなんて…ちょっと不便だったけれども…。長かった工事が明日でおわりだと思うと、すこしなごりおしいような…と、ちらりと思いましたが、やはり工事がおわってくれてうれしいです。

 

 さて、きのうの話のつづきです。
 運転免許の更新で視力検査にあっさりと引っかかり、半分絶望していたわたし。その後はいかに!?

 視力検査担当の方に「目を休めてから、もう一度受けてみてください」と言われたものの、休めたくらいで回復する視力ではありません。検査を受ける前から、自分の裸眼の視力はけっこう落ちているのではないかと感じていました。4年ほど前に眼科でつくった運転のためのめがねは、度が強すぎると頭がいたくなってきてしまうので弱めにつくってもらったにしても、裸眼で見るのとほぼ変わらないくらいになってきているのではないかともうすうす感じていました。
 けれど、検査で集中して、いざとなったら目を細めれば(それはだめでしょ…)見えるんじゃないかと信じこんでいたのです。
 しかし、検査で答えを求められる切れ目のついたわっかは、大きなサイズのものではなく、ずるして目を細めたくらいじゃ決して太刀打ちできない小さなサイズばかりでした。

 どうしよう、全然見えなかった…。しかも、検査の人きびしい…(それは当然だろう)。
 わたしは近くの長椅子に座って、しばらくぼうぜんとしていました。
 ちょっと休んでまた受ける勇気はない。チャンスはあと1回だから、だめもとで受ける余裕はないのだ。
 しめきりは16時…今は11時をすこしすぎたころ…。

 めがねを超特急でつくってもらうしかない!

 わたしはメロスのごとく走り出しました(あぶないから落ち着け)。

 でも、どこでつくってもらえばいい?
 全然知らない土地に来ているので、めがね店を探してやみくもに走りまわるのは危険度が高すぎる。自分がけっこう重度の方向音痴であることは自覚しています。自分がすこしでも知っている、かつ、わかりやすいところにめがねをその場でつくってくれる店はないか…。わたしは、使い慣れないスマートフォンでいっしょうけんめい検索をかけました(スマートフォンで日常使うのは、LINEと電話くらいなのです)。

 幸運にも、わたしは電車を乗りかえた駅ビルにめがね店があることを発見しました。
 しかもそのめがね店はできあがり時間が最短40分ほどです。
 ここだー!いそげーーー!!
 はやる気持ちを適度におさえつつ(転んだらあぶない)自分の運動能力の範囲内の早足で歩きました(ふつうの人の並足レベル)。

 無事駅ビルに到着して、めがね店を見つけることができました。
 店内では若い女性が接客を受けていて「あ~、これもいいですねぇ」と言い、ゆっくりと試着しながらめがねフレームを選んでいます。そののんびり具合に理不尽にいらだちかけたものの、若い女性のフレームはそう時間がかからずに決まり、店員さんはわたしに声をかけてくれました。
「どんなものをお探しでしょうか?」
「すぐにめがねをつくってほしいんです!最短でどれくらいでできますか?」
「レンズの在庫があれば、40分ほどでおつくりできます」
「在庫があるレンズでつくってください!」
 ちょっとむちゃくちゃです。
 明らかにいそいでいる様子のわたしに、店員さんは苦笑いしながら聞きました。
「今、コンタクトはつけていますか?」
「つけていません!」
「では、そちらの機械で視力を測定しましょう」
「おねがいします!運転免許更新の視力検査のためのめがねがほしくて…前に買っためがねはもともと弱くつくっていたので、あまりよく見えなくて…」
 めがね店に到着し、すぐに接客してもらえたのですこし落ち着きをとりもどし、店員さんに事情を説明します。
「なるべくはやくつくっていただきたいんです」
「何時までに店を出ればいいですか?」
「1時までには出たいです」
 店員さんは慣れた手つきで視力をはかってくれます。警察署のものとちがい、遠くに見えるひらがなを読むものでした。
 わたしは近視のほかに乱視もあるそうで、店員さんがわたしの目に合うレンズをてきぱきと決めてくださいました。世界が見ちがえるくらいはっきりと見え、感動するくらいでした。これで検査官も文句ないだろうと鼻息をあらくしました。

「レンズは在庫があるので、すぐおつくりできます」
「ありがとうございます!」
 よかった、在庫あった!
 安心しきったわたしは、フレームを選ばずに店を出てしまいました。

 30分ほどたったあと、「もうできているであろう」とふたたびおとずれためがね店で店員さんがかけよってきて、
「あさか様、フレームを選びわすれていました…!よってレンズがまだ削れておらず、めがねはまだできておりません…!」
 と申し訳なさそうに言いました。

 ああああ!
 フレーム!
 わたしはどこまでぬけてるのよ…!

 またも半分絶望しかけたものの、あせっているときこそ落ち着くことが肝心です。店員さんによればあと20分ほどあればめがねをつくれるそうなので、ぱぱっとフレームを決めて、心の静寂をとりもどそうと店のすぐ横の木のベンチにすわって持参してきた文庫本を読みはじめました。

 もう12時半。おなかは空いているし、のどもかわいているけれど、めがねが無事にできあがるか気がかりで、それどころではありません。
 めがねを受けとったら、コンビニで飲みものを買って飲もう。
 そして、ふつうのペースで歩けば十分すぎるくらい間に合う距離なんだから、落ち着いて警察署にもどろう。
 わたしは本の世界に半分ひたりながら思いました。