ぽくぽく日記

毎日のくらしをぽくぽくとさんぽするように味わいたい。

「いつもどおり」の尊さ 前編

今週のお題「復活してほしいもの」

 こんばんは。あさかいおです。
 ひとつ前のお題(自分へのごほうびだったでしょうか)を書こう書こうと思っているうちに、お題が変わっていました。
 今回のお題こそは、変わらないうちに書きたい!ということで、つづっていきたいと思います。

 

 わたしの「復活してほしいもの」は、実家の町にあったドーナツ屋さんです。

 チェーン店のドーナツ屋さんで、30年くらい営業していました。
 母や妹といっしょにお茶をしたり、友だちとドーナツをほおばりながらわいわいとしゃべったり、ひとりで来て本を読んだり手紙を書いたり、夫と付き合っているころは朝ごはんを食べたり、ほんとうにお世話になったお店でした。
 ドーナツのあまくて香ばしいにおい。コーヒーやカフェオレはおかわり自由というふところの深さ。ラジオのようなBGM。木のテーブルといす。そのドーナツ屋さんのすべてが好きでした。

 就職してからの7年間は、ほんとうによく通いました。
 休みの日の朝、母に「ドーナツ屋さんに行きたいわね」とつぶやくと「じゃあ、ささっとしたくして行きましょう」と返ってきて、いそいそと出かけました。携帯をわすれても、本をわすれたことはないふたりです。
 コーヒーは2杯半はのみたいところですが、お客さんがふえて店員さんがいそがしそうで、おかわりを言いにくいときもありました。でも、それはそれでよかった。また来ればいいのですから。
 付き合っているころの夫とのデートは、ドーナツ屋さんでの朝ごはんからはじまることが多かったです。わたしはチョコレートのかかったドーナツ、夫はクリームがサンドされたドーナツが定番でした。いっしょに朝ごはんを食べはじめてしばらくたつと、しょっぱい系のドーナツがぐんとふえて、選ぶたのしみが倍増しました。
 こんな感じで、多いときは月に3回は行っていました。

 家の近くに、こんなにいやされる場所があってしあわせ…!ドーナツ屋さんで思う存分まったりするためにも、仕事をがんばろう。
 ドーナツ屋さんに行けば、いつでもこころがほっこりしました。

 例の感染症が流行して、ドーナツ屋さんの営業時間も短くなりました。
 でも、お店がつづくのなら全然問題ない!
 自粛期間はあまり行けませんでしたが、またいつも通りにお茶ができることを信じて、家でちくちくと手芸にはげんでいました。

 しかし、ドーナツ屋さんの営業時間はどんどん短くなっていきました。
 そのうちに、こんな紙が店の前に貼られました。

「10月末をもって、閉店いたします。長い間ありがとうございました」

 閉店を知ったときのことを思い出すと、今でもしんみりしてしまいます。
 小さいときからずっと通っていた大好きなお店がなくなってしまうなんて。
 信じられず、そして信じたくなくて、涙がこぼれました。

 閉店の日が近づくと、ドーナツを買い求める人がたくさん来て、店内は前みたいにゆっくりとお茶をする雰囲気ではなくなりました。
 お店が閉まる前にもう一度お茶をしたかったけれど、空気が変わってしまったなかでドーナツとコーヒーを味わったら、その苦い気持ちが心に濃くのこってしまいそうだったので、やめました。

 いつも通りにお茶をしたのがいつなのか、はっきりと思い出せません。
 お店で最後に食べたのはなんのドーナツだったのかも思い出せません。
 やがてドーナツ屋さんはほんとうに閉店してしまいました。

 ドーナツ屋さんはしばらくそのまま建っていました。すぐにとりこわされるのはかなしいけれど、もう明かりの灯らないドーナツ屋さんを見るのもさみしいものでした。
 そしてついにドーナツ屋さんはこわされて、そこにはドラッグストアができました。

 …すみません、最後まで書きたいのですが、あしたちょっとはやいので、つづきはまたあした書かせていただきたいと思います。
 あしたになったら、もしかしてお題が変わっているのかも…そうだとしても、あしたつづきを書きます。